念珠ストーリー Episode1
【おばあちゃんの重なり】
祖母は、厳しい人だった。
《もう少し優しく生きられないのかな》と
幼子ごころに、思っていた。
踊りの師範で、いつもキリッとしてして
お作法や言葉遣いに、厳しく、
祖父にも、父母にも
きつい言いまわしで高圧的な態度に見えた。
女としてこんな風になりたくないと思った。
そんな祖母がとても嫌でたまらなかったし、
正しさなんていらない
可愛らしさが欲しい そう反目した。
そんなあるとき、祖父が亡くなった。
不慮の事故で、突然のことに
身内の誰もが動揺を隠せない。
納得とか、諦めなんていうものが
どこを探しても見当たらない中で、
無言で動かない祖父と対面することになり
家族の死を受け入れるなんて
あの状況では皆が無理な話だった。
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その時の祖母は、
わたしの知っている
いつもの祖母ではなかった。
髪の毛を振り乱して声を震わせ、
「死んだんですか?!」と
医者に詰め寄り、やがて、祖父の遺体の前で
へなへなと座り込んだ。
《あいしてたんだ。。。》
その一連の祖母の姿に ものすごく 驚いた。
それからというもの、祖母は
祖父の陰膳に毎日手を合わせて、
祖父の大好きだったチョコレートを
いつも切らさずに仏前に供えていた。
寂しい心を包むような色のお念珠を手に
そっと、そっと手を合わせながら。
あの頃の厳しかった祖母は
どこにいってしまったんだろう。
祈る姿は、どこまでも優しくて
頼りなく、びっくりするほど小さく見えた。
わたしが知らなかっただけで
祖父の前ではこのひとは
可愛い女だったのかもしれない。。。
そう思った。
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その祖母がほどなくして
後を追うように亡くなった後、
形見になったお念珠には
その柔らかい薄桃色に似合わず
チョコレートの香りが染みついている
みたいだった。
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そして、何年か経ち、成人したわたしは
自分のためにお念珠を買った。
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自分のために、素直に祈っていいんだ、
ということを知って、
どうしても欲しくなった綺麗な深い赤。
祖母の念珠の色合いとは対照的に濃くて
はっきりしていることに
天邪鬼な自分がいるようで可笑しかったが
手に持ってみたとき、これだ!と感じた。
お念珠って、不思議だ。
自分で、決めて選ぶことで
祖母でもない、母でもない
私の人生を再出発するような気持ちになる。
当たり前のことだが、それを、改めて思う。
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気がつけば、人にも自分にも
厳しく生きてきた気がする。
《もう少し優しく生きられないのかな》
それを、今度は自分自身に向けることに
なるなんて。
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念珠を買った時に、先達さんから
供養について教わった。
「忘れないことが供養なんだよ」
「ご先祖さまの名前を呼んで、一緒に聴いて
もらうんだよ。そこで自分の願い祈りを
してごらんなさい。
『この子の幸せのために』と喜んで
動いて下さるよ。
あなたが幸せに生きることが
何よりの供養になるんだよ」
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《そうかぁ》と素直に思えた言葉。
思わず帰ってから祖母の遺した念珠を
引っ張り出してきて眺めてみた。
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自分の念珠に、形見の念珠を重ねてみる。
二つの色のグラデーションがなんだか
泣けるほど心強くて、涙が出てくる。
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「あんたの信じる幸せを生きなさい。
思ったように生きて。
応援しているからね。」
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祖母のキビキビした声で言われた気がした。
.
「おばあちゃん。。。」
わたしも実は愛されていたのかもしれない。
いまも、見ていてくれるのかもしれない。
お詣りに行くときは、二つ重ねて
素直にわたしのことを祈ってみよう。
心細いときは、二つ重ねて
見守っててね、って手を合わせてみよう。
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重ねてつかえるのは、すごく嬉しいこと
なんだなぁと思ったら、
合わせた手元から
チョコレートの香りがふわっと、届いた。
ジュエリー念珠は宗派国籍問わず誰でも
使える、心強い祈りのパートナーです。
高品質の鉱物と無添加純銀からできた念珠で
邪気を溜めずに祈りをサポートする
新しい形のとても美しい念珠です。
代々使える丈夫さや、修理のフォローも
しっかりしていて安心です。
いろんな色合いがあります(^_^)
●巡禮記 のこと
ご神仏とのお付き合いの仕方については
人の数だけ例もありとても幅広いので
一人一人全員に違う祈り、違う暮らしがある
ことを何よりも大事にしてゆくのが
巡禮記のスタンスです。
巡禮記 講話会や、遠足やツアーでは、
一人一人にできる、ご神仏とのお付き合いの
提案やアドバイスなどを
先達の豊富な経験から伝えてくれます。
どなたでも参加できます。
祈りを揃えないことの面白さは
遠足やツアーでぜひ体感しにきてください。
記:松本育子