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–生き方と須佐厳の師について–③ バンコクの華僑の父

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もうおひとかたの「師」は、
須佐厳がジュエリーブランドHOWCLUB創業時に大変お世話になった
バンコクの某シルバージュエリー製造商社代表トンチャイのお父さん。
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やはり単身中国からバンコクに渡ってこられ、
タイの15%のシルバー製品流通に関して発言力を持つまでになられた郭先生です。
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かつて長男(トンチャイ)の経営するシルバーランドが窮地に陥ったとき、
須佐厳の商社時代の人脈を提供して役に立てていただいたことがあり、
そのとき以来、俺のことを息子同然にかわいがって下さいます。
この世の中にこれほど有り難いことはありません。
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郭先生と俺とは直接、会話によってあまり正確に意志疎通が図れません。
先生が早口なのと、俺のタイ語がヘタなのとが原因ですが・・・
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しかしその「たたずまい」や「姿勢」から多くのことを学ばせていただいていただきました。
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長男であるトンチャイをはじめ、4人の子を設けられて、
タイの最高峰であるチュラロンコーン大学を全員卒業させ、
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現在 (2009年当時)
長女はバンコクSCにせまる銀地金取引と計量器流通販売をしている企業を経営しています。
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次女はバンコク一の宝飾工具、機械の商社と小売店を経営しています。
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三女はカオサン通で一番大きな(ニセ925)問屋に嫁がせ経営権を握っておりますし、
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次男はやはりカオサン通りで、そことは違うコンセプトのシルバージュエリーの商社を経営しています。
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三女と次男とでカオサン通の70%の売り上げシェアがあります。
フィリップのところでニューロードの70%のシェアです。
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優良バイヤーに提供する正確な品質の製品から、
テキトーなバックパッカーが買い付ける、安かろう悪かろうの、
いい加減な純度の商品まで実に幅広く、
グループが常に在庫している銀はざっと220トンに及びます。
その全てが年間に海外に輸出される量ですから、
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タイ全体ではもはや20%を越えるかも知れません。
つまり郭先生はシルバー界の「ドン」なのです。
しかし・・・・
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郭先生はボクに対してそれを一度も誇ったことがないのです。
水が流れるごとく自然にそうなったとでも言う風です。
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追いかけると全てが逃げて行く。
お金や地位や信望などがそのよい例です。
借金商売をしてお金を追って行くとものすごい早さで
お金の方が逃げて行きます。
ギャンブルする人の心の中と顛末も同じ事です。
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逆に
間違いなく背筋を伸ばして進んで行くと、必要なものは後から付いてきてくれる。
あたりまえといえばあたりまえですが、これほど難しいことはないのです。
それを自然体でやっておられる、この世で数少ない方です。
つまり「生き方」が間違っていないのです。
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たたずまいは「職人」以外の何者でもありません。
お姿が見えないなと思っていたら、他の職人に混じって、やはり1階の試作工房におられます。
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「カズ(すさげんのこと)!こんなのが出来た!見てくれ!」
満面に笑みを浮かべて、バフかすで真っ黒になった手で仕上がったリングを見せに来られます。
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「先生これはおもしろいですね。でもボクならこう仕上げますよ!見とってください!」
作業を交代すると真剣な眼差し、ボクのような小物の作業でも逃すことなく吸収しようとされます。
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「そうか!こういうテもあるか!ほんまか!これはええ!ほんまにええ!」
更に続けるようせがまれて、
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「ちょっとオマエらも来い!やり方を見せてもらえ!見て憶えろ!ぐずぐずするな!」
などと他の職人を全員集合させる始末。トンチャイも商談を中座して降りて来るし、
第二工場からもわんさか小さな試作工房に職人達を集めます。
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ボクの実父よりお年を召しておられるのに、あきれかえるほどの探求心。
宇宙の果てまで届きそうな向上心。
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「ごはん食べたか?まだか?そしたらすぐに用意させる!
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おーいカズが来た!ごはんごはん!」
「辛すぎるのはだめ!あれとこれは抜いてな!それからあれは忘れるなっ!」
俺の食事の好みのような、小さな小さなコトも忘れずに憶えて下さってます。
そして必ず食事に同席下さいます。
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「これウマイか?どうだ?ダメか?そしたらこれはどうだ?」
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帰国の挨拶に立ち寄ると、
「えっ?もう帰るのか?なんで帰るんだ?今度はいつ来るんだ?何を持ってきてくれるのか?」
人に対する「礼と義」がこれほど心地よく感じられる瞬間はありません。
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このように出会い以来、常に感動と勉強と笑いの連続のお付き合いをさせていただいております。
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以上は2009年当時のお話で、それ以降、須佐厳はアーティストとして、
国内外いろんな芸術家との親交ができてきましたが、
郭先生だけは別格の存在です。
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権威と威厳、それから風格がタイ経済のトレンドです。
「ドン」らしく5階建ての社屋の一番上でふんぞり返っているのが普通なんです。
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タイでは、かけ離れた身分の人と目を合わしてはいけないという妙な風習が未だにあり、
下働きの職人なんかは顔さえまともに見れない。それで普通なんです。
それを良しとしない先生はタイ経済界の中でも異端児かも知れません。
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郭先生のたたずまいは、<これぞ本物の経営者たる姿>であると心に焼き付けております。
先生の「生き方」には及ばないかも知れないし、今は単なる「サルマネ」に過ぎないのかも知れません。
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しかし終生忘れてはならない、ひとつの素晴らしい「生き方」であると思います。
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みなさんも「生き方」を妙なトレンドや
まやかしの言葉の数々で見失わないよう
きっちりと背筋を伸ばして歩んでいる「師」を探してみてはどうでしょう?
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「師匠」とは
難しい、新しい言葉を使わず、
自分と、周囲の人間に動きを作ってゆく人だと思います。
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そして、動けなくなってしまったことの原因の山から
その人の手を引っ張ってあげられる人ではないかと思います。
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そうか、生きながらにして、地蔵のような人だね。
今までを振り返って、須佐厳はそう思います。
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須佐厳
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–生き方と師について–おしまい
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画像の説明
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神戸・関帝廟(かんていびょう)
三国志で有名な「関羽将軍」の御霊を祀る道教の寺院。
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戦前戦後、神戸在住の中国の人たちは、差別政策で
一様に、過酷な運命をたどることになりました。
その やさぐれを救い続けたのがこの聖地です。
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神戸の発展は、華僑の人たちの活躍無くしては語れませんから。
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あなたは人種や、みてくれや、職業や年収で
人をより分けしてませんか?
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関羽将軍は、いつもおっしゃいます。

差別するのなら、とことんすればいい、
差別したとしても、あなたが差別してるんではなく
つまりは
あなたが差別されているんだと。
とことんやれば
とことんそのままだ。
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